インナモラートの微熱4度04



 そこにはちょうど自分のベッドがあり、教室で倒れたような衝撃はない。
 思い出せばあの時ぶつけた腰が痛かった。
 圧し掛かってきた清水が首筋に吸い付く。
 倒れたタイミングでスラックスが脱げて、露になった太ももを手が彷徨った。
 清水はきっちりと服を着込んでいるというのに、自分が半裸状態ということも涙を誘う。
「や、やっぱこええよ......ごめん清水っ」
 涙ぐみながらぐっと握った拳を振るう。
 だが、頬を狙った拳は清水の手の平に納まっていた。
 手首を掴まれてベッドに押し付けられる。

 本気になれば、押しのけられると思っていた渉はそれに驚いた。

「清水っ! しみず、やだって!」
「......ごめん。僕も余裕がないんだ。拒絶しないで受け入れて」
 見上げた男は、浅い呼吸を繰り返しながらぎらぎらとした眼差しを向けてくる。
 言葉通りに余裕がないらしく、恐ろしく真顔で怖い。
「っひ!」
 下着越しにぐりぐりと股間を刺激された。
 痛みというには弱く、快感というには強すぎる刺激に渉は身体を跳ねさせる。
 渉の眉間に寄った皺に気づいたのか、強さは弱まったが手で扱くように触れられてびくびくと反応した。
「こわ、っい......」
 涙声になりながら訴えるが、清水はそのまま手を動かした。
 自分とは違う触れ方の手淫に、性器が芯を持ち始める。
 もぞもぞと揺れる腰に、清水は下着のゴム部分に手をかけて下げた。
「っ」
 渉は自由になる片手でそれに抵抗するように逆に引っ張り上げる。
 傍から見れば恐ろしく滑稽な攻防だった。
 下着が脱がせられないことを知ると、清水はソコに顔を寄せる。
「う、っそ......」
 渉はその光景に目を疑った。
 普段一片の隙もない優等生がなりふり構わずに、自分の股間に顔を埋めている。
 ボクサーパンツはぴったりとした素材で身体のラインを浮き上がらせている。
 はっはっ、と清水の熱い息が当たり、渉は赤面した。
「あ、っあ、あっ」
 濡れた布が当たる。もごもごと口を動かされて渉は頭を振った。
 一度はネットで調べた。エロ広告の動画で、かくかくと動く程度のものを見て興奮したこともある。
 その行為を、今、頼りになる委員長にされている。
 その事実だけで脳神経が焼ききれそうだった。
 清水が掴んでいた手を離して両手で下着を下げようとするから、渉もそれを両手で拒んだ。
 でもそうするとよりあからさまに性器の形を浮き上がらせることになる。
 舐めて濡らされ、色濃くなった下着は、さっきよりも大きくなったペニスを卑猥に見せていた。
「ああ、わたる......」
「っひゅ、あ、っああっ」
 下着がざらざらと擦れて堪らない。
 本能にしたがって腰が揺れて清水の上唇に先端を擦りつけていた。
「っ」
 快感が突き抜ける。他人に与えられる刺激に耐性のない身体はあっけなかった。
「う、あ、あああっ!」
 絶頂を迎えて渉は甘い悲鳴を上げた。下着の中で性器が跳ねる。
 存分に精液を吐き出した渉は、ぐったりと弛緩した。

 恥ずかしさで、死ねる。

 腕で顔を隠して荒い呼吸を整えようとしていた渉はそっと視線を下げて 雄の色香が存分に出ている男に眼差しを奪われた。
「ん」
 渉が腰を揺らしたせいで、清水の顔の下半分が濡れている。
 清水は指で頬をなぞり、白いものを拭うとそのままぺろりと舐めた。
 口元のホクロが白く濡れている様には、ぞくっとしたものを感じた。
 元々男らしさは十分にあったが、自慰などしませんといった表情の清水が、渉の下半身に舐めるような視線を落とす。
 それに煽られるように、渉はびゅくっと下着の中で残滓を吐き出した。
 ボクサーパンツはもうぼろぼろだ。
 渉と清水で引っ張り合ったこともありゴムが変に伸びてしまっている。
 さらには性器から出された白濁が、繊維の合間からぷくっとにじみ出ていた。
 自分の目から見ても、その様は淫猥すぎて逆上せそうだった。
「きれいに、しないと......」
 小さく呟いた清水の手によって、下着がずり下げられる。
 渉ももう抵抗しなかった。性器と下着の間で白濁が糸を引く。
 むわっと熱気と特有の匂いが広がり、見ていられなくて渉は顔を逸らした。
 しかし、濡れた熱いものに包まれた感覚にぎょっとする。
「き、汚いって清水!」
 汚れた幹、先端はもちろん、陰膿にまで舌を這わされ、渉は喘ぎながら嫌がった。
 倫理観が抵抗させるが、本音を言えば物凄く気持ちがよかった。
 そのせいで弱々しく首を振るしかできない。
 五分以上丁寧に舐め尽してから、清水はようやく身体を起こした。
「ふ......」
 舌が離れたことを心のどこかで残念に思ってしまう。
 清めるためだったのかもしれないが、清水の舌は巧みで、渉のものはまた緩く勃ち上がってしまっていた。
 清水は口元を手の甲で拭うと、忙しなくベルトをくつろげ、スラックスと下着を脱ぎ捨てる。
 トランクス派なのか、とまともな思考を拒否した渉はそんなことを考えていた。
「渉......」
 目の前に突きつけられたのは、既に大きく腫れ上がったペニス。
 綺麗に剥けられた先端は赤黒く、幹もそれなりの太さがあり血管を浮き上がらせている。
 黒々とした下生えと重そうなタマを見て、思わず自分のものと見比べてしまった。
 勃起すれば剥けるが今は皮を被った状態で、長さはあるが清水のものと比べると太さが足りなく毛も薄い。
「お、俺、むり、舐められないから!」
 咥えろと言われるのかと、渉は口を手で隠して青ざめて首を横に振る。
 フェラチオは憧れだが、されるのがいいのであって、することは想定外だ。
「うん。そんなこと言わないから......見てて」
 渉の身体を跨いだ清水は渉の目の前で自慰を始めた。
 見せ付けるように上下に扱かれる性器が目の前で揺れる。
 渉の目はそれに釘付けだった。
 いやらしい、匂いもする。先端に雫が浮かぶ。

 あっ......あ、垂れた。

 先走りがニチュニチュと音を立てていて卑猥だ。
 逃げ出す様子もなく魅入られるように見ている渉に、清水は少し躊躇するように自分の唇を舐めると、ぐっと身を乗り出した。


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