10月-5


 酷く呼吸が乱れ、ぐったりとベッドに沈み込む。
 快感を伴った倦怠感に、腰の奥がだるく感じられる。
「ゴホッ......ゴホ......」
 ついついぼうっとしてしまった俺は、むせている小野に気付いてがばっと起き上がった。
「うわ、やっぱ喉に絡むな......」
 口元を押さえながらヤツは眉根を寄せている。
「......」
 の、飲んだのか?あれを?
 俺が出した......。
 思わずその場に正座して、俺は小野の前に両手を差し出す。
「吐き出せ」
「ええ?もう飲んじゃったよ。ほら」
 ぱかっと口を開いて見せる。
「馬鹿」
 なんであんなの飲むんだ。
 絶対美味しくないものを。
「あ、まだ少し残ってるね」
「ひゃっ?!」
 ベッドによじ登った小野は、俺を押し倒すと足を広げさせて萎えたものの先端に吸い付く。
 ちゅくっと、鈴口に残った白濁を吸われて、俺は腰を震えさせた。
「な、なんで吸うの......」
 かぐんと力の抜けた俺は、キッと小野を睨んだ。
「ん?だってもったいない」
「もったいなくない」
 ぺろっと唇を舐めている小野の肩を、掴んでぐっと引き寄せる。
「待った。ともあ」
 ちゅっ。
 押しのけようとした馬鹿を押さえつけ、唇を重ねた。
 舌先でヤツの唇を舐める。
 う......。
「ッ......まず」
 ヤツの唇についたものを舐めただけでも、これだけ変な味がするのだ。
 飲むなんて考えられない。
 不味い味を消そうと一生懸命に小野の唇を舐めていると、逆に肩を捕まれた。
 ぽすっとベッドに押し倒される。
 ああ?なにすんだコラ。
「普通フェラの後ってキスしたくなくなるもんじゃねえ?」
「したくない」
 本当ならうがいさせてやるのがいいんだろうけど、真っ裸で1人でベッドで待つのも嫌だ。
 小野の後頭部を掴んで引き寄せようとすると、嫌がられた。
「そうだよね。......ちょっとだから、待っ」
 口を開いた隙に、舌を入れてやる。
 少しでも味が薄れればいい。......まずい。
 こんな酷いキスは、初めてだ。
 俺がうんうん唸りながら唇を重ねていると、小野は少し笑ったようだった。
 何笑ってんだてめえ。
「なに」
 声なく笑う小野を見つめて実際に声を出して尋ねると、髪を指で梳かれた。
「ううん。俺のことを煽ってんの、わかってねえなって思ってさ」
「へ。......っわ」
 肌を密着させて、ぐうっと下半身が押し付けられる。
 俺の太ももに当たるのは、ヤツの高ぶりだった。
「......」
 無理、と口に出そうになるのを堪えて俺は息を飲む。
 だけど、俺が怖気づいたのがわかったのか、小野はそっと俺の額にキスをした。
「ともあきさんが大丈夫になるまで、下は脱がないから」
「ん......っひゃ、」
 指で胸の突起を弄られる。
 ソコに唇を寄せるのを見た俺は、もう動悸が激しくてどうしようもなかった。
「ふ、ふやけさせんな、よ......」
 この間はずっと触られて吸われて、大変だった。
「ここ?うん。努力はする」
「あ、まっ......すわ、な......ッんぁ」
 吸うなと言われた小野は、がじがじと歯で噛み付いた。
 少し痛い。けれど何度も噛まれているうちに、じんじんとした痺れが生まれた。
 導火線が繋がっているみたいに、胸を触られるだけで下半身まで熱くなる。
 腰が揺れそうになるけど、揺らすと小野に腰を押し付けるようになってしまうから、堪えた。
 5分は既に経ってる気がするけど、今更抵抗する元気もない。
 そのぐらい、また俺は追い詰められていた。
「とろとろだ......気持ちいいんだね、ともあきさん」
「っふ、」
 どこを見て言っているのか、なんて考えたくもない。
 小野の手が俺の腰をなで、それから足の付け根にちゅっとキスを落とされた。
 やらしい声を堪えようと口を手で押さえるけど、それだと息苦しい。
「ぁう......っく」
 そのせいで声は駄々漏れだ。
 肩で息をしながら天井を見上げる俺は、もういっぱいいっぱいだ。
「ともあきさん、ともあきさん」
 ......あ?
 ぺちぺち頬を叩かれて、俺はヤツを見た。
 俺と視線が合うと、嬉しそうに笑って、手にしていたものを見せる。
「これを塗るから、うつ伏せになれる?」
 透明な液体の入った円型の容器。
 小野が蓋を開けて逆さまにすると、とろっとした液体が出てきた。
 それを手に乗せて、手の平に塗り広げると、その手で俺の肌に触れる。
「っ、ぎゃ......なに、それ」
「ローション。ぬるぬるして気持ちいいでしょ」
 確かにぬるっと触れ合った肌が滑る。
「ひぅ、......んっ」
 乳首にも塗られ、手の平で突起を引っ掛けるように触れられると、また変な声が出てしまった。
 酷い俺。恥ずかしい......。
「ともあきさん、うつ伏せになって」
「ん」
 俺はわたわたとうつ伏せになって、枕に顔をうずめた。
 これで、恥ずかしい顔は見られなくてすむと、少しほっとする。
 だが、それは間違いだったことに、すぐに気付いた。
「膝、立てて」
「!」
 腰を掴んで上に引っ張られる。言われるままに膝をベッドにつくと、ぐっと足の間を広げられた。


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