9月リクエスト-14
「と、ともあ」
「黙れ」
熱い。
シャツも脱ぎ捨てる。
これで上半身が裸になって涼しい。夏に焼いて少しは肌も健康的になったから、別に出しても恥ずかしくない。
片手で自分を扇ぎながら、ちらりとヤツを見た。
「と、もあきさん......」
掠れた声で名を呼ばれる。
手を伸ばそうかどうしようか悩んでいる様子だ。
......けっ。
ぷいっと顔を逸らして、俺は酒を飲んだ。
「......俺ら、帰るか。リュウ、カオルを連れてけよ」
「はい」
「ちょ......!」
ひょいっと薫さんを隆介くんが抱き上げる。
怜次くんは志穂ちゃんの手を引いた。
そうか。じゃあ俺も帰らないとな。
立ち上がるとふらっと足元が揺らいだ。
あれ?
「危ないよ!」
倒れかけた俺を、ヤツが抱き止める。
そのまま床に押し倒された。
「んじゃ、頑張れカズ」
「おう。わりいな」
「ばいばいあきちゃん」
ちょっと待て。俺も帰る。
薫さんは先に隆介くんに連れて行かれていた。
志穂ちゃんが怜次くんと一緒に出て行ってしまう。
待てよ。俺も帰る。
「嫌だ。行かないで」
立ち上がろうとしたところに、ヤツに抱きつかれた。
みんな出て行ってしまって、ドアが閉められる。
「ごめん。でももう、薫は普通の友達だし。......ともあきさんに言ったら、心配かけるかと思って......」
「言って欲しかった」
「そうだよね......ごめん」
腹にぐいっと頭が押し付けられる。
背中には手が回されて、離れそうにない。
......しょうがない。許してやるか。
しばらくヤツの頭を眺めていた俺はそっと手を伸ばして、撫でてやる。
すると、更にきつく抱きしめられた。
「薫さん幸せそうだった」
「なんか大変そうだけどな。......ともあきさん」
「ん?」
「ともあきさんも、俺が幸せにするからね」
「......」
ぎゅっと俺は男の髪を握った。
引っ張られて痛かったのか、ヤツが顔を上げる。
「ともあきさん、顔真っ赤」
ううううるせえ。ボケ!
ベシッと叩くと、男にヘソに吸い付かれた。
「あ」
ぺろぺろと舐められて、身体の力が抜ける。
「俺謝ったから、次ともあきさんね」
「え......?」
「裸になったから。他の人の前で、服は脱がないで」
指摘されて、俺は顔をしかめる。
だって、それは......。
「熱かった、から」
「じゃあ俺と、もっと熱くなろ?」
ヤツが、にやっと笑う。
「あ......ん」
そっと、腹を撫でられて仰け反ったところで、唇を奪われた。
「ともあきさんは俺を幸せにしてね」
「......馬鹿」
甘く蕩けそうな言葉で、俺はとろとろに溶かされてしまった。