騙すなら、身内から-7


 ニュチュニュチュ、と俺の手の中から濡れた音がする。
 なんか勢い込んで馬鹿なことをしたような気がするが、ここでは止まれない。
 サイズってのは、やっぱ一番大事なとこじゃん?
「どぉ......だッ!」
 ビクビクと震える大事な息子から手を離し、俺は仁王立ちした。
 爆発寸前の、一番デカイサイズのはず。これなら......と、胸を張る。
 真宏は俺の顔を見たあとに、じっくりと下半身に視線を移した。
 胡坐をかいて座っている真宏の下半身はあえて見ない。
 てか、本当に何やってるんだろう俺。達樹の隣に並べるだけのお姫様を目指す予定だったのに......。
 ふいに我を取り戻して落ち込みかけた俺を、改めて奮い立たせてくれたのはやっぱり真宏だった。
 しばらく眺めたあとに、俺を見上げながら言った一言は、
「......ウィンナー?」
 だった。
「ふざけんなぼけえええええ!その結論しかでねえのかよっ!」
 肩を掴んでがくがくと揺すってやる。
「ちょ、マジ、視界......きもちわる」
 ぐわんぐわん揺らされたせいか、真宏は顔をしかめた。
 俺の手を払い、眉間に皺を寄せたまま口元を押さえる。
「せめてホットドックとかさあ、な?あるだろいろいろと!」
「ホットドック、ねえ......」
「今度ウィンナーなんていったらぶん殴るからな?」
 首を傾げる真宏の肩をバシッと思い切り叩くと、俺は脱ぎ捨てた服を拾った。
「じゃ、そゆことで」
「待てよ」
 そそくさと浴室に向かおうとした俺の肩に、真宏が手をかけた。
 俺はうろんげに真宏を見る。
「んだよ?」
「それ、俺で勃ったんだろ?」
「はあ?違う!俺の想像力の賜物!」
 あはんうふんな格好で誘う達樹を捏造した脳画像が、俺をここまで勃たせたんだ。
 これっぽっちも真宏が入る要素はねえ。
 ぷいっと顔を逸らした俺に真宏が呟く。
「......わざわざ、風呂場でヌくつもりかよ?」
 ぐっと腕を引っ張られて引き寄せられた。
「っはなせ、......よッ」
 ふらついたように見せかけて、勢いを持って蹴りを出す。
 が、真宏はそれを予測していたように腕でガードし、腕を引いていたその手で俺の下半身に伸ばした。
「っ......ぁん!」
 男の一番大事なところ、具体的に言えばチンポを、この馬鹿はやんわりと握ってきた。
 元々、自分でギリギリまで高めていたこともあって、軽く触られただけで腰がカクンと落ちてしまう。
 ヤバい......。ってか、なんだ今の声。
 力が抜けてふらついた俺を、真宏は自分の太ももの上に乗せた。
 あき、らかに、おかしくねえ?この体勢。
 しかも、真宏は俺の握ったまんまだし......。
 ちらっと視線を上げて見ると、真面目な顔で真宏は俺の下半身を見ている。
「普通」
 呟いた真宏の手が動く。
 上下に、刺激するように。
「んっ......」
 鼻から抜けたような、変な声が出た。
「男に握られたら、萎えるもんじゃねえの?」
「あ、あっ」
 ばああああか!こんな状態になったら出さなきゃ、治まるもんも治まらねえに決まってるんだろうが!
 って、言いたい。
「ばぁ、か、......あぅ!」
 結局馬鹿、までしか言えなかった。
 1人でオナニーしてるときなんて、喋ったりしないから、この状態で悪態つくのがどれほど大変かなんて知らなかった。
「ま、まて!マジ、やば......!」
 俺がずりずり尻を動かして逃げようとすると、腰を掴んで元の位置に戻される。
「あっ?」
 その際に、ごりっとしたものが、俺の太ももに触れた。
 高められる刺激を受けながら、そのものを確認すると......。
「真宏!なにそれ!人間じゃねえよ!」
「コレは人間じゃねえだろうが」
 いや......そのスケールは間違いだろうよ......。
 思わず凝視してしまうと、何言ってんだとばかりに、ぐっとその触れた太ももにその、真宏の息子さんが押し付けられた。
「ぎゃ!」
 反射的に腰を浮かせて逃げたところで、今度は床に押し倒される。
「お、まえ、なんで、勃起してんの?」
 俺は、おそるおそる掠れた声で尋ねた。
 すると、真宏は少し驚いたそぶりを見せる。
「さっきから、こうだった。なんでだろうな。お前の裸なんて見慣れてるのに」
 覆いかぶさった幼馴染が呟いて、俺の身体のラインを指先で撫でる。
「すっげえ、興奮した」
 抱きすくめられながら囁かれて、俺の脳みそはショート寸前だった。
「お、まえ、変じゃねえ......」
「なんで」
 ぎゅうぎゅう抱きついてくる幼馴染を押しのけようとしても、押さえつけられて身動きが取れない。
 それどころか、あのビックマグナムさん(もうさん付けだよ、この犯罪級の大きさは!)が俺の腰にすりすりと擦り寄ってくるから、始末が悪い。
「なんで、俺で勃つの」
 俺は泣きそうになってきた。
 小さい頃から近所で一緒で、チビだったから一緒に仲間はずれにされて、空手覚えて強くなろうってお互いに奮起して、それで未だに高校まで一緒になった、親友のはずだ。
 親友で勃起なんてしない。
 鼻水垂れそうになって、ずずっと啜ると、真宏は俺の顔を手で包んだ。
「なに、その顔」
「......うるせえよ」
「俺のこと、嫌い?」
「嫌いじゃねえけど、こうゆうこと、お前とはしたくない」
 だって、親友だもん。恋人じゃねえもん。
「お前は俺の親友だから、こういうことしちゃいけねえんだよ......」
 言葉にしたら、もっと切なくなってきて、俺の目にぶわっと水の膜が張る。
 俺の表情に真宏は驚いたのか、慰めるように俺の頭や肩を撫でてきた。
 その優しい手つきに、更にぼろぼろと涙が出てしまう。
「俺の、チンポ、ウィンナーでいいから......お前の方がでかいってわかったから、......もうやめようぜ?」
 ずびずび鼻を啜って見つめる。
 あまりに垂れてくる鼻水に、真宏はティッシュを取ってくれた。
 ブーッと鼻をかんで、ぽいっとゴミ箱に捨てる。
 お、ナイスシュート。
 別次元で、そんなことを思う。
「......俺は恋人になれないのか?」
 泣く俺に、幼馴染は真面目な顔で聞いてきた。
「真宏が恋人になったら、俺の親友は誰になるんだよ。いねえじゃん。お前は親友なの」
 そうだよ。真宏が恋人だったら、親友がいなくなる。
 寂しい子になるじゃねえか俺。
 俺がきっぱり告げると、真宏は難しい顔をした。
 そして口を開く。
「親友なら、扱き合いぐらいする」
「......え?」
 そうなのか?
「このぐらい、誰だってしてるぞ。......握って」
 戸惑う俺の手に、その、マツタケが握らされた。
 生暖かいマツタケ、きもい。
 どうしようか悩んでいると、真宏は俺のチンポを握る。
「皮、剥いてねえの?」
 耳元で囁かれた。
 その指摘に、かぁっと顔が赤くなってしまう。
「......剥くと痛いし......風呂に入ったとき、洗うぐらいだけど......」
「そっか」
 こすこすと、真宏が俺のを扱きだした。
 皮から、俺の大事な息子が顔を出したり引っ込んだりしている。
「ん......」
 やべ、気持ちいい。
 じぃんと腰にたまる快感に、俺は小さく息を吐いた。
「俺のも、扱いて」
 言われて、俺も手を動かす。
 人のを刺激するのは初めてだし、かつ、こんな太いの握ったことがない。
 恐る恐る上下に動かしていると、だんだん濡れてきた。
 はあはあと、互いの息遣いと、ニチニチという濡れた音が部屋に響く。
 親友同士なら、これ、普通のことなんだよな?
「もっと、手を動かせ、よ」
 真宏が目を細めて催促してくる。
 なんか、いつもの馬鹿騒ぎしているときの顔と違って、......なんていうんだ?苦しそうな顔だ。
「お、お前こそ......」
 なんとなくその眼差しに見つめられるとそわそわしてしまう。
 だから、そっけなく言ってやった。
「してやってるじゃねえか」
「っ......やぁ、ん!」
 先走りで濡れた先端を指先でぐりぐりと押されて、俺は腰を引いた。
「......なんつう声、出すんだよ」
 真宏が顔をしかめる。
 俺の手の中のヤツのでっかいのが、更にでかくなっていた。
「なに、食べたら、こんなでかくなんの......?」
 少しだけ羨ましくて、ぐちゅぐちゅ扱きながら尋ねる。
「......秘密」
 真宏は少し考えるそぶりをしながら、結局は答えてくれなかった。
 ケチくせえ男だなこいつ。
 じろっと睨んだが、言葉には出せなかった。
 それどころか、真宏の手が気持ちよくて仕方がない。
 俺はヤツのチンポを扱くのをやめて、真宏の手を剥がしに掛かる。
「ん、や......だめ、も、でそ......だから......」
 しかし、この馬鹿は俺の大事な息子から手を離そうとしない。
「何が出るんだ」
 それどころか、より早く手を動かして刺激し出した。
「せぇ、えき。でる、で、るって、ば......ぁ!」
 馬鹿!早く離せこのボケカス!!
 どんどんと胸を叩いても、真宏は離さない。
「あああっ!!」
 とうとう、俺は我慢しきれずに、ドプッと真宏の手に発射してしまっていた。


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