1月-3
「ともあきさんってさあ」
少し間延びしたような言い方。
「俺と逢えない間、1人でシた?」
「......」
何を、なんて聞かなくったって、俺だってわかる。
質問の意味を理解した途端、かあっとまた顔に血が集まった。
ややあって、俺はゆっくりと一度だけ頷く。
「うそ、したの?ってか、俺の言ってる意味わかってる?」
質問した和臣の方が驚いた声を出す。
......なんだかいたたまれねえ気がするのは気のせいか。
「する。それぐらい」
触ったり、ぐらいなら。
下手すると、寝てるうちに下着汚したりする。
だから最近は、もやもやしたら早めにどうにかするようにしていた。
「マジで?」
和臣は俺の言うことが信じられないみたいだ。
「なんで、疑う」
「いや、なんかストイックっぽいから。夢精で終わりってのが多いと思ってた」
しみじみと呟かれる。
お前の中の俺のイメージっていったいどんななんだ。
「俺、だっておとこ、だし」
普通だろ。......違うのかよ?
自信の持てない俺はじいっと和臣を見上げる。
が、俺を見下ろしたまま、和臣は何も言わない。
だんだん不安になってくる。
「俺のこと、考えて触ったの?」
覆いかぶさるように、和臣が身体を密着させてくる。
「ほかでも、よかったの......ッん」
意地悪な質問に俺が小さく抗議すると、その唇がすぐに塞がれた。
心地のいいキスで、気持ちが和らぐ。
「ううん、嬉しい」
甘えるような声で囁かれ、俺はくすぐったくて首をすくめた。
ちゅっちゅ、と何度か繰り返していると、いつの間にかジャケットが脱がされていた。
室内とは言え冬だ。部屋の寒さがじわっとくる。
身体を震わせると、和臣がそれに気付いて暖房を入れてくれた。
俺の身体に跨ったまま、和臣も同じように服を脱ぎ捨てる。
なだらかな筋肉のついた身体。......あいかわらず人のコンプレックスを刺激する身体をしてやがる。
再度身体を密着させて、服の裾から和臣の大きな手が入り込んでくる。
手は腹を撫で回して胸板に滑った。
和臣にべたべた触られつつ、服を脱がされる。
「......さっき抱き上げたときも思ったんだけど、少し太った?」
「え、まあ、おもちおいしかった、し......っひゃ」
普通に質問してきたから、普通に返事をしていたら、きゅっと胸の突起を摘まれた。
思わず抗議しようと顔を上げると、首筋に吸い付かれた。
突起をいじる指の動きは止まらない。
ちょ、やめろって、そこ......。
「ともあきさん細すぎるから、もうちっと太ってもいいと思う」
和臣の声はいたって平坦だ。
それなのに、指は俺を煽るように動く。
「は、っぅ......」
もう片方の乳首に吸い付かれた。
口から漏れた声が恥ずかしくて両手で塞ぐ。
「ここらへんの肉つき、とかさあ。腰とか、マジ細いし」
ウエストの部分に手が下りる。
そのままジーンズをぬ、脱がされる。
腰を上げて、脱がしやすいようにするのも、恥ずかしいけど慣れた。
「ケツもちっちゃい」
「!」
な、撫で回すな!!
身に付けるものを殆ど剥ぎ取られた俺は、和臣に散々肌を撫でられた。
撫でられたってより......なぶられ、た?
首筋舐めたり、わき腹にキスしたり、俺がついつい反応しちまう体のあちこちを撫で上げることはもちろん、手の指の間にねっとりと舌を絡まれたり。
俺は翻弄されっぱなしだ。
「かず、おみぃ......そこ、あ、ああッ......」
俺が声を上げると、ばかは執拗に責めてくる。
「かっわいいなあ」
先端から液体を滲ませる陰茎を、和臣に握られる。
それだけで腰が跳ねた。
他の部分に与えられていた刺激だけで、俺はもうほんとに、余裕がない状態だ。
和臣が握った手で、ゆっくりと上下に揺する。
「ぁ、ひいッ」
イク。目の前がかすむ快感に足の付け根が震えた。
が。
ぱっと手が離されて、絶頂をはぐらかされる。
「どうやって、すんの。見せて」
和臣が俺の身体を抱き寄せて起き上がる。
膝の上に乗せられた俺は、思考が止まりかかっていて、された質問の意味がすぐに飲み込めなかった。
「な、......え、どして......」
腕を和臣の首に回して身体をくっつける。
下腹部のアレが、挟まれて擦られて気持ちが良くて、俺は目を閉じて腰を震わせた。
「ともあきさん、聞いてる?」
むにっと頬を引っ張られて、俺は眉間に皺を寄せて睨みつける。
「どこ、触ってするか、見せて」
「......へ、んたい......ッ!」
そこでようやく言葉の意味を理解する。
ここで自分でしろって?ふざけんじゃねえよ。
「むり......」
ふるふると首を横に振っても、ばかは諦めない。
「出来るんでしょ?見たい」
甘い声でひどいことを言う。
「ばか、しね」
「俺のこと、好き?」
「......ん」
「じゃあ、見せて」
じゃあってなんだじゃあって!
言いたいことをぐっと飲み込んで、俺はそっと自分自身を握った。
ぐちゃぐちゃな、ソレ。
勃起してるときにあんまりまじまじ見ることなんてない。
いつも、早く終わることに必死だ。
「ん、っく......ん、ん」
目を閉じて懸命に上下に扱いていると、「ともあきさん」とまた呼ばれた。
「俺見ながら、して」
......いちいち注文が多いやつだなこのやろう。
目尻に涙を溜めて、睨みながら扱いた。
「ばか、ばか......てめえが、いるのに、なんで俺、1人で触ってんだよ」
くちゅっと音が鳴る。濡れた音。自分で触るのは、気持ちいいとは少し違う。
身体の反応で仕方なくて、どうにか収集つけようとしてる感じだ。
「かずおみ、のばか......」
身体は高ぶってんのに、絶頂が遠のいて、脳みその中もぐしゃぐしゃ。
もう、無理。嫌だ。自分でしたくない。
俺は自分から和臣に抱きついて、口を開く。
「おまえの、手がいい......」
だから、早くさわれっつってんだろうが。
「......くっそ」
和臣は軽く舌うちをした。
またベッドに押し倒される。
「参った、降参。自分で触るともあきさんもすっげかわいいけど......それ以上にねだるともあきさんが、ここまで凄いと思わなかった」
悔しそうなそんなぼやき。
なんだそれ。わけわからん。
熱い手で、勃ち上がった芯を握られ、ほっとするとともに快感が身体を駆け巡る。
ゆっくりと与えられる愛撫に、俺は仰け反った。
あと、もうすこし......ッ。
自分でするのとは全然違う。こいつの手って、すごい。
「ンッ......ああ、あっ!」
ぎゅうっと抱きつく。腰が揺れて、止まらない。
そのまま俺は、和臣の手の中に白濁を吐き出した。
「は......っふ」
忙しない呼吸のまま、身体から力を抜く。
と、ぐいっと、足を開かされた。