11月リクエスト-8


「じゅう、く......ん、っ」
 ......まだ理性があるな。
 律儀に回数を数えるともあきさんに、再度唇を重ねる。
 このままここでいっそのこと押し倒したいが、フローリングではともあきさんが痛いだろう。
 かといって抱き上げてベッドまで運んだら、まだ我を取り戻して抵抗されるかもしれない。
 平日、身体を重ねるのは嫌がるのだ。
 俺の負担になると考えての抵抗のようだが、どうして俺の負担になるかわからない。
 どっちかっていうと、負担はともあきさんの方が大きい。
 そこはあえて突っ込まなかった。
 俺も、制限がなければ、きっともっと貪ってしまうから。
 今日は水曜日だから、本当なら駄目な日だけど、触るぐらいならいいよな。
「ともあきさん」
「ぁ......っ、そ、さわら......ッ」
 ぐりぐりと手の平でともあきさんの性器を揉むと、ぽろんっと眦から涙が落ちた。
 性的刺激は得意ではないらしい。
 泣くともあきさんは、可哀相でもあるけど、それ以上に興奮してしまう。
「キス、して。ともあきさんから」
 唇を突き出して催促すると、震える手をともあきさんは俺の頬に添える。
 ちゅ、ちゅっと吸い付いてくるだけの拙いキス。
 ともあきさんからキスを受けている間に、俺の手はさりげなくともあきさんのジーンズのボタンを外し、ジッパーを下げている。
 緩く履いているジーンズから現れた下着の中に手を入れると、案の定、ぐちゅっと音がした。
 先走りが多いせいで、中はもうぐしゃぐしゃだったんだろう。
 もっと早く脱がしてやればよかった。
「や、......」
「もっとキス欲しい」
 腰を引いて逃げようとしたところに俺が催促をかけると、恨みがましい眼差しで睨まれた。
 さっきも言った通り、強請られたらするしかない、と思っている節があるともあきさんは、腰を逃しつつも俺にキスしてくれた。
 かわいいなあ。もう。
 俺は調子付いてしまう。
 しっかり腰を引き寄せて、手を上下に揺らす。
 すると断続的に声が上がった。
 掠れた、あきらかに男の声。それにもやっぱり興奮する。
 結局、俺がともあきさんで萎える要素は一つもないのだ。
 俺がともあきさんを高めることに夢中になっていると、キスを繰り返していたともあきさんが俺の耳を引っ張った。
「いてっ!」
「ぁ、ふ......」
 驚いた俺は強く握ってしまったが、にゅるっとすべったおかげで、ともあきさんには痛みがなかったようだ。......よかった。
 睫を震わせて感じていたともあきさんが、すっと視線を下に向ける。

 俺の耳を掴んでいた手が、そろそろと下がって、俺の。
 股間をなで、た。

「と、ともあきさん?!」
 俺は裏返った声で恋人を呼んだ。
「おまえ、は......いいの?」
 いや、今日はそこまでしないから!
 視線を上げることが出来ずに、うろうろと彷徨わせながら、ともあきさんはなんとも嬉しいが、今の俺にはきつい誘いをかけてくる。
 今は無理だ。最後までするには時間が足りない。
 短時間で突っ込んで、痛みなんて与えたくない。
 手元にはジェルもゴムもないんだから。
「俺は、大丈夫だから。ね?」
 ごくっと息を飲んで、にっこり笑みを浮かべる。
 すると、ともあきさんは不機嫌そうに眉を寄せた。
「そんな顔しないで。平日だし、俺がともあきさんに無理やり触っちゃったから、それの責任取るだけ」
 言葉を連ねても、ともあきさんは気に食わないようだ。
 だが何かを思いついたのか、小さく笑うと、ともあきさんは唇を突き出して目を閉じた。
 う゛キス待ち?
 寸前に見た微笑が気になったが、それでも恐る恐る唇を重ねる。
 薄く開いていた口を割って舌を侵入させたところで、かちゃ、と俺の下半身から聞こえる音に、俺は脳内で悲鳴を上げた。
 ともあきさんが、ベルト外してる!めっちゃ俺の下半身触ってる!
 身を引こうと唇を離すと、「ん」と再度口付けを求められた。
「や、あのね、ほんと、俺の理性が持たないし......」
「......」
「ほら、もう少しで時間だよ?ともあきさんのだけ触らせてくれれば、いいんだけど......」
「......」
「俺は大丈夫だからさ、ね......?............えっと、」
 ちゅっ。
 俺の言い訳を一言も聞こうとせずに、キスを待っているともあきさんに根負けして、俺は口付けをする。
 と、ともあきさんの手が再度動いて、俺のジッパーを下げてごそごそし始めた。
 取り出そうとしているようだが、自分のものを取り出すのと勝手が違ってなかなか出せない。
 ようやく取り出せたときには、ともあきさんは耳まで真っ赤になっていた。
「うう......」
 小さく唸って、震える手で俺のものをゆっくり扱いてくれる。
 すごく下手だけど、それでも気持ちが良い。
 ともあきさんがしてくれるってだけで、俺はもうイきそうだった。
 ......実際初めて手コキされたときは、もう堪んなくてさっさと出したけど。あまりの速さにすごくショックだったけど。
 だって、ともあきさんが俺の触ってくれたんだよ?ホント、死にかけた。
 今も危なくて、俺はともあきさんの手首を掴む。
「い、一緒にしよ」
 座った俺の胴を挟み込むように足を広げてもらって、体を密着させる。
 そうだ、別に挿入だってなくていい。こうして抱きしめられれば。
 俺のが、ともあきさんの可愛い(っていうと怒るけど)ものの、裏筋を擦り上げる。
 それからぎゅっと、二本を合わせて握って扱いた。
「ぁう!」
 ともあきさんが仰け反って、甘い声を上げる。
「やべ、かわいい......」
 つい呟いてしまった。
 でも聞こえてないみたいだ。ともあきさんは俺の胸に額を押し当てている。
 呼吸が短く荒い。絶頂が近いのだ。
 ずっと見ていたいけど、俺も余裕がなくなってくる。
「も、だめ......っ」
 顔を上げて訴えてきたともあきさんに、俺ももう悩殺されてしまった。
「ともあきさん!」
 唇を重ねるが、俺が焦りすぎてガチ、と歯が軽くぶつかる。
 それでも、ともあきさんは俺の首に腕を回してすがり付いてきた。
 俺も唇を貪りながら、ラストスパートとばかりに手を早める。
 低く呻いたともあきさんが達したのに少し遅れて、俺もどくんと白濁を吐き出した。

 タイミングがずれたのは、ともあきさんより早くイってなるものか、と我慢した結果だと思いたい。


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