9月-14

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 ヤツの誕生パーティと言っても、騒ぐのがメインらしく、プレゼントもそれぞれあっさりと手渡していた。
 薫さんはキーケース。怜次くんはウォレットチェーン、志穂ちゃんはサントラCD。
 俺はといえば、カバンから包みを出したものの、なかなか渡せずにいた。
 みんなと一緒に渡せばよかったのに、タイミングを逃した俺。
 用意した野菜や肉が物凄い勢いで消費していくのを眺めて、俺は隣に座ったヤツの様子を伺った。
「ん?」
 見上げると、視線に気付いた男が微笑んでくれる。
 つい、無言で視線を逸らしてしまった。
 烏龍茶を飲んで、乾く喉を潤す。
 そして手をテーブルの下に下げると、すぐにヤツの手が俺の手に絡んできた。
 指が、俺の手を優しく撫でる。
 ちらっと視線を向けても、ヤツは怜次くんと話している。
 それなのに、熱い手は俺の手を握って放さない。
 おかげで、俺はあんまり焼肉を楽しめなかった。
 お決まりの歌も歌って、火を消したケーキも平らげて。
「じゃあそろそろ帰りましょうか」
「もう食えねえ......」
「ねむーい」
 志穂ちゃんが、怜次くんに甘えるように背後から抱きついている。
 怜次くんはそのまま志穂ちゃんを背負って立ち上がった。
「寝んな。家まで起きてろよ」
「怜次背中あったかーい」
「寝んなって」
 そんな会話をしながら玄関に向かう。
 コンビニ店員も見送りに立った。
 俺も追いかけようと立ち上がると、薫さんに腕を捕まれる。
「智昭片付けよろしくね」
 前もって俺が泊まることを聞いていたのか、薫さんがふふふと笑う。
「和臣、飲むペース抑えてたから、朝まで大変かもね」
「え」
 意味を図りかねて俺が首を傾げると、薫さんは形のいい唇を動かす。
「アルコール、取りすぎると勃たないのよ。知らなかった?」
 ちょ......なんで今そんなこと......。
 赤面して俯いた俺は気づかなかったが、薫さんは意地悪そうな顔になっていた。
「ちゃんといっぱいジェル使ってもらってね。智昭、腰細いから、好き勝手にされたら痛めちゃうかも」
 い、言いながら、腰を撫で回さないで欲しい......。
 からかう薫さんの魔の手から逃げていると、ヤツが戻ってきた。
 俺の泣きそうな顔を見ると、むすっとして薫さんを睨む。
「薫、ともあきさんに構ってないで帰れよ。彼氏迎えに呼んでやったから」
 言いながら携帯を見せた。
 薫さんは、途端に訝しげな表情になる。
「は?私、今付き合ってる人いないけど」
「法学部の後輩。男の格好してたお前に告白したって聞いたぜ。そいつ」
 にやっと、人が悪そうな顔になるコンビニ店員。
 そんな顔も出来たのかとなにやら関心しながら、俺は薫さんを見た。
 すると。
「......っの、馬鹿!アイツは単なる後輩だ!」
 怒鳴って薫さんが出て行ってしまう。
 すっげ、真っ赤......。
 いつも余裕がある薫さんの、初めて見る反応に俺はぽかんと口を開けた。
 その顔を、ヤツに突かれる。
「片付けよう?」
「ん」
 薫さんも前に進んでるんだ。
 そう思って、ほっとした。
 テーブルを綺麗に片付けて、換気して。ほっと一息つけばもう遅い時間だ。
 今日中に渡さないと、意味なくなる!
 はっとした俺は、慌てて男に近づいた。
「ん?」
 食器を洗っていた男に背後から近づいて、おずおずとプレゼントを差し出す。
「......開けていい?」
 駄目なわけねえだろうが。
 俺は答える代わりに、ぎゅっと抱きついて男の背中に顔を埋めた。
「腕時計......ありがとうともあきさん!」
 くるっと回転した男に、抱き上げられて口付けを与えられる。
「凄い嬉しい。大事にするね」
 鼻先をすり合わせて、ヤツが笑う。
「......ん」
 俺はヤツの首に腕を回してしがみ付く。
 そっと、自分の手首を撫でた。
 家を出る前につけていた時計は、今はない。
 カバンの中にしまってある。
 同じ形の時計を俺が持っていると知ったら、こいつはどんな顔するだろうか。
 俺が買ったものはかなり前だ。その分ぼろぼろ。
 ヤツに送ったものは、新品で同じものを探した。
 買えてよかった。あまり新しいデザインじゃないけど、気に入ってくれた。
 それが嬉しかった。
「......あ」
 キッチンの台に座らされて、俺の服の中にヤツの手が入り込む。
 熱い手がわき腹をなでて、背中を伝った。
 ぞくり、とヤツの触った場所が熱くなる。
 はふ、と熱い息を吐いて、俺は男を見つめた。
 ヤツの、ぎらつく目の光が見える。
 何度か深呼吸を繰り返して、ヤツは自分の熱を抜いているようだった。
 そこまで欲しがられているのかと思うと、じんわりとした熱が下半身に来る。
 やばい。俺もやっぱり変態かも。
 変態につられて変態になってしまった。
 そんなことを考えていると、床に下ろされる。
「......今日、ホントにいい?」
 かすれた声。なにがと聞かなくてもわかる。
 俺は小さく頷いた。
「じゃ、先に行ってて。俺、トイレ......」
 離れかけたヤツの手を、ぎゅっと握る。
「歩けない、から」
 小さい声で言うと、じっと凝視されているのがわかる。
 ああもう、察しろよお前!
「どうしてともあきさん、そんなに可愛いこというかなー......」
 男に抱き上げられる。首筋にキスを落とされた。
「今日は理性、持たないかもしれないから覚悟してね」
「......」
 頷くことも、嫌がることも出来ずに、俺はベッドに運ばれた。

 口ではああ言ったけど、ヤツは目いっぱい優しくしてくれた。
 さ、最後まで出来なかったけど、俺はヤツの手で達して、ヤツのも、その、俺が手でシた。
 大きさを見て、やっぱり無理かもと挫けそうになったことは秘密だ。


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