10月-4
バイクで秋の風を切って、ヤツの、小野の家についたとき、俺はぼんやりとしていた。
「手、冷たくなっちゃったね」
降りてバイクを駐車場に入れるのを眺めていた俺は、ヤツに手を握られた。
手が、熱い手に包まれて体温が移る。
その状態でマンションに入って、エレベーターでヤツの部屋に向かった。
無言で俯く俺を、小野は優しく引いて部屋に連れ込む。
靴を脱いで上がって、腰に手を回された。
「好き」
そのまま抱き寄せられて、啄ばむようなキスを落とされる。
ちゅっと唇を触れ合い、何度か口付けを交わす。
キスを繰り返しながら寝室に連れ込まれた。
「ともあきさん、シャワー......とか、どうする?」
小野は、上着を勢い良く脱いで上半身裸になりながら尋ねた。
「あさ、入った、から......」
自分で致してしまったあと、どうしてもさっぱりしたくて朝からシャワーを浴びていた。
けど、それは良かったと思う。
今、離れたくない。
というか、離れたらできなくなりそうなのが、目に見えている。
こういうのは勢いだ。......きっと。
「そっか」
ヤツの肌を見れずに、視線を彷徨わせていると頬を撫でられた。
俺の頬を撫でた手はゆっくりと下がり、俺の着た長袖シャツのボタンに手がかかる。
上から、一つ一つ丁寧に、外されていく。
鼓動が激しいのを、ヤツにバレやしないかと俺はドキドキしていた。
「......座って」
促されてベッドに腰を下ろす。
座ってみると、足が震えていたことに気付いた。
俺より先に、小野が気付いていたんだろう。
緊張がバレているようで、やっぱり恥ずかしい。
長袖シャツを脱がされ、中に着ていたタンクトップも剥ぎ取られる。
貧相な身体を晒したくなくて、咄嗟に脇にあった薄いシーツを引き寄せた。
「隠さないで、もっと俺に見せて」
「見ても、たのしいものじゃない」
「いいから。ともあきさんの全てが見たい」
切実にそう訴えられて、俺はしぶしぶシーツを手放した。
「ありがとう。......ともあきさん大好き」
嬉しそうに告げられても、俺は心境複雑だ。
軽く肩を押されて横に倒される。
「!」
抱きすくめてくるのかと、ぎゅっと目を閉じたところで、ジー...ッとジーンズのジッパーが下げられる音がした。
「ちょ、ま......っ」
いきなり、ソコ、から?!
驚いた俺は、上半身を起こそうとするが、小野に胸をぐっと押されて起き上がることが出来ない。
見られたくなくて足を閉じると、そのままずるっとぬ、脱がされた。
下着も一緒に脱がされたらしく、腰周りがスースーして心もとない。
それよりも、言葉通りに全てを晒していると思うと、羞恥が来てしまう。
ヤツを蹴ろうと反射的に足をバタつかせた瞬間に、足を捕まれ広げられた。
「ぎゃあ!」
恥も外聞もなく、俺は悲鳴を上げる。
すると、小野が顔を上げて俺を見た。
「怖い?」
言葉にこくこくと頷いて、手を伸ばして抱きしめてもらう。
じゅ、順番に進めよ!俺はこういうの得意じゃねえんだから!
何度か口付けをもらって、がちがちになっていた体が蕩けていく。
すると、ヤツは不思議な提案を俺にしてきた。
「ともあきさん。5分だけ、俺がすることに動かないで我慢してもらっていいかな?」
「ご......ふん?」
なんだそれは、と思ったが、小野は至極真面目な表情だ。
「そ。痛いことは絶対しないから。最初は5分、我慢して。......出来る?」
で、出来るか出来ねえかで聞かれたら......。
「や、る。......やる。我慢、する」
そう答えるしかねえじゃねえかこのボケ。だけどホントに5分だけだぞ?
俺の答えに安堵したような顔をした小野は、ぴっと天井を指差した。
「5分間、天井見てて」
て、天井?
促されるままに、視線を上に向けた。
すると、また胸を押されて仰向けに寝転がる。
ぬるっ。
「う、わあああ!」
「5分だけだから。ね?」
ね?って......ちくしょう......!
ぎゅっと口を閉じて、ついでに目も閉じる。
天井なんて見ている暇はない。
手は、俺の下半身に顔をうずめたヤツの頭に添えるだけで、精一杯だった。
は、ハードル、高すぎる......。
「んん......っは、あ......」
直に与えられる刺激。ソコを舐められるなんて最初から知ってたら、我慢するなんて約束、してなかった。
「っひ、あ......そ、れ......ぁ、や」
びくびくと、腰が跳ねる。
ピリッとした軽い痛みが走って、驚いて視線を下げた。
「剥いただけだから、大丈夫」
な、なにが大丈夫......。
「ひぃ、あ!」
普段殆ど触れることのない部分をぺろりと舐められた。
勝手に動く分は、しっかり抑えられてしまう。
5分だ。5分だけ我慢すれば。......あと、何分?
「ま......っあ!だめ......ソコは、あ」
喘ぐ俺は、ゆらゆら腰を揺らしてしまう。
先端を啄ばまれ、裏側を、舐められて、俺の息は上がったままだ。
がま、ん......我慢......ッ。
じゅるっという水音、とか、恥ずかしすぎる。
「ともあきさん。あのね」
しばらくしてヤツが唇を、俺のソレから離した。
そしてなぜか濡れている(なにで濡れているかは、考えたくない)指で、俺のモノを上下に扱き出した。
「......っ、あ、ああ、んっ、しごか、な......!」
この、馬鹿!我慢できなく、な......っ。
「えっと、射精は我慢しなくていいんだよ」
「ふ、......ぇ?」
目の前が涙で潤んで良く見えない。
手の甲でごしごし拭って、そっと見下ろして、俺は固まる。
「いっぱい出してね」
小野が、この変態が、ふわりと微笑んで、先端の色づいた部分にキスをした。
そしてそのまま、深く銜え込む。
「だめ、っあ、っでちゃ、......ぅっ!」
どくんと、俺は男の口の中で爆ぜてしまった。